丘の上の楽園「178FARM」

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178FARMさんにやってきた!

よく晴れた日の2月6日に、農家を営む稲葉さんの農場へやってきました。
稲葉さんが作る野菜は「178FARM」として知られ、人気があります。
野菜の品種は多種にわたり、はイタリア野菜を中心に、プチヴェール、アレッタ、ケール、カラフルなカブなどが代表的に知られています。

カラフルなカブ。生のままでもジューシーで、グリルすると、旨みを感じる。

その味わいは、品種としての可能性を超えるほどに、旨味と甘みが濃く、生き生きと命みなぎるハリ感があります。
しっかりしているのに、火を通してみて、さらに増す美味さと、柔らかさ。
食べれば一目瞭然の品質で、千葉県内では「房の駅」「千葉そごう」はじめ、東京都内のレストランにも卸しています。

今までずっと不思議だったこと

いつも、大変なんだろうな、と心配になるほど、野菜の量も質も維持している。
一体、これだけの品種の美しく美味しい野菜を、どうやって作り出荷しているのだろうか?
稲葉さんは、夫婦二人の農園のはず。。。
美味しい野菜で料理を支えてくださっていることへの感謝も込めて、今日は市原の奥地にある178FARMさんにやってきたのです。

稲葉家

ご夫婦は、
稲葉まさひこさん
稲葉じゅりさん
のお二人。
近年はとっても可愛い赤ちゃんも誕生!
三人家族の稲葉家です。
まさひこさんも、じゅりさんも、ホワンんと優しく柔らかい方。
どこかしっかりとした力強さも秘めた雰囲気は、二人に共通するところがあります。

なぜ市原市を選ばれたのか?

もう一つ、稲葉さんにいつか聞いてみたかったこと。
どうして市原市で農業を始めたのか?
私自身も千葉の魅力についてもっと知りたい気持ちから聞いてみたところ、
まさひこさんの実家が市原市だということ。
なるほど〜!
市原市で生まれ育った稲葉さんは、この農場がある土地の良さも魅力もよく知っているはずです。

178FARMは、丘の上の「楽園」

プチヴェールが美しく花嫁が持つブーケのように花開き、房なりに実をつける畑。
   
ここは通りから少し入った先にある、小高い丘の上にあります。
少し山を登り切ると、ぽっかりと平に開けた土地に出ます。
まあるく開けた土地の周りは、さまざまな樹木に囲まれていて、今まできっと数百年か何千年か、樹木の落ち葉をふさふさと受け止めできた場所です。
「この近くには昔お城があって、この場所はお城に仕える人のための住居を作るために切り拓かれたんです。でも、結局この土地は、家来の住居にはならなかった」
と、じゅりさん。
大切な家来を住まわせる場所ですから、きっと安全で、豊な土地を選んだことでしょう。
なんだかここだけぽっかりと、他の山々と区切られて、ちょっとした「楽園」のようなのです。
「楽園」という言葉を使うと、ひときわ嬉しそうに、
「そう!!!楽園!」というじゅりさん。
「台風が来た時も、周りの木々が守ってくれて、ちょうどここだけなんの被害も無かった」
その言葉がしっくり来るくらい、ここは守られている場所だと、踏みしめる地面の感触と、青すぎる空をくっきりと切り取り縁取る木々から感じました。

農家になるきっかけ

稲葉さんに、就農のきっかけ、なぜ農業なのか?を聞いてみました。
SNSでは、鮮やかな野菜の写真で、楽しさが全面に伝わってくる178FARMですが、畑を始めた当時は苦難の時期でした。
会社勤めの忙しい勤務の日々を送っていた夫妻。
じゅりさんが病に倒れた日がありました。
闘病の日々、じゅりさんはできる範囲で庭に出て、お家の前にある小さな畑を始めました。
その小さな畑は、なかなかうまくいき、まさひこさんは仕事を辞めて、
2番目の畑として、この丘の上の「楽園」農場にやってきたのです。
「やっぱり、野菜を育てるのが二人とも好きなんだと思う」
と、じゅりさん。
二人が好きなことと、この楽園が出会い、一気に生産量がアップ。
収穫がピークに達する時は、一晩中作業に追われる時もあるそう。
そんな時は、じゅりさんの仲間が遠方から助っ人に訪れる。
じゅりさんの人柄が、お金なんて要らないから手伝うよ!
という気持ちで駆けつける仲間を引き寄せているのは、間違いありません。
農業のこと、土のことなど、どうやって学んだのですか?と聞くと、
「一度、修行に農家へ行ったのですが、どうしたことか米農家に修行に行ってしまって(笑)」
結局は二人とも独学で、野菜作りを学んできたのです。

178FARMを見て分かる成功の秘訣

畑を見て分かることは、まさひこさんのおおらかだけど、真面目で丁寧な性格。
整っていて、見ているだけで癒される畝。
畝は一本が三つの区画に分かれていて、3つの品種を植えているところもあり、手間をかけ、細かな作業を行っていることが分かります。
シェフの希望に合わせて珍しい品種の人参を植えている箇所もあり、
通年、多品種を生産し続けるために、肉体的な力だけでなく、思考もフル稼働で畑をデザインしていることが分かります。
多方向にわたる能力をとても高いレベルで発揮し続けてる、脱帽の努力。
素晴らしい畑に今日はやってきたな〜と、ため息なのでした。

「楽園」の守り人

実はこの楽園にはかわいい妖精みたいな人が住んでいます。
ピンクの畑用作業着に、腰からたくさんの畑用アイテムをぶら下げて、せっせと草木の世話をする人。
 
まさひこさんの叔母さんです。
敷地内の古民家に住み、家の前にある森の木々を整備し、美しい花をつける木を植えてきました。
「お父さんとね、もう、何十年もだ。この木も、あの、あそこの切り株もだよ。山を開いて、植えてきたの」
叔母さんが指差す先には、春に向かって蕾が膨らむ桃や桜の木がありました。
叔母さんの人生が、ジャン・ジオノの小説「木を植えた男」の主人公にも重なりました。
「妖精さんの(叔母さんの)楽園の中で、キャンプして、カレー作ったこともあるんです」とニッコニコで教えてくれたじゅりさん。
ここは、やたらめったら人に教えることはできない、まさに秘密の花園でもあるのでした。

無農薬とか、オーガニックとか

素人が始める新規就農と、178FARMはレベルが違う。
それくらい短期間で飛躍的にプロ農家への仲間入りを果たした178FARM。
今やプロ農家の人も、二人が他品種栽培をどうやって日々こなしているのかを知りたがるほどになっています。
農家の祭典として開催しているイベント「久留里ええもんいち」でも178FARMは、大手農場と肩を並べて市に並んでもらっています。
土壌が素晴らしいので、肥料も農薬も使うとしても最小限で、まさに需要高のオーガニックとして売り出すこともできるが、パッケージには、ただただ178FARMのオレンジのシールが貼ってあるだけ。
「無農薬とか、オーガニックとか、どうして書かないんですか?」
と聞くと、
「オーガニックって書いてあるから買う、という人に買って欲しいわけではないんです。一度食べてもらって、買うかどうか決めて欲しい」
たしかに、178FARMの野菜は一度食べたら違いが分かる。
美しくて、味がよくて、命に溢れていて日持ちもする。
特にプロからしてみたら、これほどありがたい野菜はありません。

新規就農と土地の人との関わり

新規就農ということもあり、地元の古株の先輩方とどう関わっていくか?も考えるという稲葉さん。
田舎でありがちだが、可能性高い若手の新人が地元にどう受け止めてもらえるかにはいろんな障壁もある。久留里で店を営む東ノハテノ国としても、この点の話題ではひとしきり話が盛り上がります。地元との交流を断つように孤立する移住者、事業者もいるけれど、
「ええもんいちもそうだけど、皆さんに知っていただくチャンスになれば、積極的に出ていきたい」
その言葉の中には、どこかやはり柔軟で優しい雰囲気を感じました。
久留里まで来てくださって本当にありがとうございます!
最近では、178FARMさんにどうやって畑をやっているのか聞く人や、多品種栽培を試す人も出てきました。単品栽培が主流の農業では珍しい流れと言えます。
178FARMの存在が、農業地域をちょっとずつ変えていく変化の核になっているのだと感じました。

優しさと、胆力と、丁寧さ

最後に見せたいものがある、と山の湧き水を貯めた場所に連れて行ってもらいました。
「3年目でやっと成功したんです」
そこにはずっと新鮮な水が流れ込むプールの中に浮かぶ、「トレヴィスタルディーボ」という紫の野菜が。
白菜のように葉が重なり、外側の葉は腐り落ちているように見えます。
ずるりと水から引き出し、母屋のバケツに水をはり始めるまさひこさん。
丁寧に外側の葉をめくっていくと、中心から、生まれたての白と鮮やかな赤紫の葉が出てきて、、、
穂先はクルンとカールを描く。
画家が汚れた鉛筆をナイフで削る時みたく、丁寧に根本をカットしては、水槽の流水にぽちゃんと入れていく。
野菜を育てる過程だけでなく、ここまで丁寧に洗い、整えて出荷している。
最後の最後まで、お二人の優しさと、胆力、丁寧さを感じた一日でした。

178FARM 購入できる場所

自社サイトにておまかせ野菜セットなど購入可能
房の駅新生 千葉県市原市糸久2-232-1 房の駅草刈 千葉県市原市草刈194-14 http://HP/fusanoeki.fusa.co.jp
千葉そごう
Instagram
農園のある市原に小さな直売所をオープン

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